iPS細胞研究所での研究不正で山中伸弥教授の所長辞任が心配されています。
研究不正はなぜ起こり、これを防ぐことができなかったのでしょうか?
目次
山中伸弥辞任なんてあり得ない!研究不正はなぜ起こったか?
山中伸弥教授が所長を務める京都大学は、iPS細胞研究所で、昨年2月に山水康平助教が中心になって発表した論文に改ざんやねつ造があったと発表しました。
近く山中伸弥教授を含む関係者を処分する予定で、所長辞任の事態も心配されます。
研究不正はなぜ起こったのでしょう?またなぜ防げなかったのでしょう?
山中伸弥所長は「不正を行った助教や、所属研究室の教授、および私自身の処分については、
大学の規程に則り速やかに検討を進め、懲戒処分を実施した際には遅滞なく公表いたします」と会見で述べています(京都大学iPS研究所CiRAより)。
バイオ分野では、2014年に起こった小保方晴子氏のSTAP細胞問題が記憶に新しいところです。
ではまず、実験データのチェック体制がどうだったのか、抜けはなかったのかを見てみましょう。
iPS細胞研究所でのこれまでの実験データのチェック体制について
実験専用ノートを全研究者に配布し、
1.(書き換えが可能な)鉛筆の使用は不可
2. プロジェクトごとに別のノートを使う
3. データなどの記入は続けて行い、空白部分がある場合は斜線で消す
4. 3カ月ごとに知的財産の担当者に提出する
1~3は通常の、特許での発明時期を証明するための実験ノートで行われていることである。これに加えて、訂正する場合は、二重線を引いて、日付とサインを入れる、機器などで測定した生データはノートに貼り付けるなどが通常行われている。
ただ、一番の違いは、「3カ月ごとに知的財産の担当者に提出する」点にあります。
「1週間ごとに、直接の上司以外の内容を理解できる管理者(隣の研究室の管理者など)に、
ノートを提出し、確認のサインをもらう」というのが、通常のやりかたです。
3カ月分のデータは膨大でしょうし、限定された分野での専門家でない知的財産の担当者が、
生データの真偽まで確認できないのではと思えます。
チェックが形骸化していたといわれても仕方がないかもしれません。
次に助教の身分が影響を与えたかを見てみましょう。
有期雇用の問題
ほとんどの研究者が有期雇用とのことで、山水助教も雇用期限が今年3月末に迫っており、研究成果が、雇用延長や別の研究機関での就職に反映される状況だったという。
短期間で業績を上げないと任期を延長してもらえない恐れがあるなど焦りを生む研究環境が今回の事件をもたらした一因ではとも考えられます。
共著者はデータ不正にはかかわっていないとのことですが、その責任はどうなのでしょう?
共著者の責任は?
論文提出に、共同研究者として名前を載せるからには、共著者は成果の一部を得るとともに、内容に責任を持つことになります。
これを特許として出願する場合には、恐らく、共同発明者となり、実用化された場合には、直接金銭的な利益を得るということもありえます。
論文の隅から隅まで、チェックしなくても、ポイントとなる生データと
最終の結論を導き出したグラフとの関係の説明を求めるだけでも、不正は見出せたのではないでしょうか?
不正を含む論文提出を許した共著者にも当然責任問題は出てくると思えます。
それでは、山中伸弥の所長辞任はありえるでしょうか?
山中伸弥教授の所長辞任は?
1. あれだけ世間を騒がせ自殺者まで出したSTAP細胞問題の当時の理化学研究所所長(ノーベル賞受賞者)さえ、
所長辞任はされませんでした。
2. 激しい世界とのIPS研究開発競争で、ここで、山中伸弥の所長辞任となると、日本のIPS研究開発に大きな痛手となる。
3. 趣味を兼ねたマラソン大会出場を、この分野の寄付募集のために行っているなど、この分野に対する熱意を世間が好感をもって見ている。
4. 今回の会見に所長として、前面に立って直接説明し、素直に謝罪している。
STAP細胞問題のときは、少なくとも初期は所長がほとんど会見に姿を見せず、
最近の阪大の物理出題ミス問題でも副学長しか出てこないなどのケースも多い。
この態度から、所長として継続して、この困難を乗り越えていってもらいたいと思われるのではないでしょうか。
まとめ
ご本人が責任を強く感じて、あくまで辞任するとなれば、そういう事態もありうるとは思えますが、
まわりがそうはさせないと思われます。
御本人が、あまりに潔癖すぎないように祈りたいと思います。
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